人事労務管理の個別化や雇用形態の変化などにともない、労働関係についての個々の労働者と事業主との間の紛争(以下「個別労働紛争」といいます)が、増加しています。
そこで、厚生労働省の平成23年度の資料から紛争の状況をみてみましょう。
総合労働相談件数 1,109,454件 (前年度比1.8%減)
民事上の個別労働紛争相談件数 256,343件 (前年度比3.8%増)
助言・指導申出件数 9,590件 (前年度比24.7%増)
あっせん申請受理件数 6,510件 (前年度比1.9%増)
総合労働相談件数は、前年度比で減少したものの100万件を超えており、高い水準を維持しています。
また、民事上の個別労働紛争にかかる相談、助言・指導申出件数は、制度施行の平成13年以降増加傾向にあり、いずれも過去最高を記録しています。紛争内容は、「いじめ・嫌がらせ(パワハラを含む)が増加し、多様化の傾向を示しています。
平成23年度の民事上の個別労働紛争相談の内訳は図1の示すとおりであり、「解雇」が18.9%、「いじめ・嫌がらせ」15.1%、「労働条件の引き下げ」が12.1%となっています。また、詳細に分類することが困難な「その他の労働条件」が12.3%となるなど、紛争内容が多様化しています。
【図3】最近3カ年度の主な紛争の動向(民事上の個別労働紛争にかかる相談件数)
平成21年度 |
平成22年度 |
平成23年度 |
|
---|---|---|---|
解雇 |
69,121(+2.8%) |
60,118(-13.0%) |
57,785(-3.9%) |
いじめ・嫌がらせ |
35,729(+10.9%) |
39,405(+10.2%) |
45,939(+16.6%) |
労働条件の引き下げ |
38,131(+8.3%) |
37,210(-2.4%) |
36,849(-1.0%) |
退職勧奨 |
26,514(+18.2%) |
25,902(-2.3%) |
26,828(+3.6%) |
自己都合退職 |
16,632(+0.6%) |
20,265(+21.8%) |
25,966(+28.1%) |
出典:厚生労働省「平成23年度個別労働紛争解決制度施行状況」
個別労働相談の相談者は、労働者(休職者を含む)が80.6%と大半を占めており、事業主からの相談は、11.8%でした。紛争の当事者である労働者の就労形態は、図2のように「正社員」が41.5%と最も多くなっていますが、前年度と比べると正社員の相談件数は減少しており、派遣労働者、期間契約社員の件数が増加しています。
図3の最近3カ年を見てみると、これまで高水準であった「解雇」に関する件数は減少し、「いじめ・嫌がらせ」「自己都合退職」などが増加しています。
分 野 |
内 容 |
---|---|
採用トラブル | 内定取り消し、自宅待機、会社倒産 など |
人事トラブル |
正社員: リストラ、病気による長期入院、出産休暇、出向、退職勧奨 など |
業務トラブル | 顧客名簿の持ち出し、インサイダー取引、詐欺にひっかかる、副業 など |
金銭トラブル | 残業代、借金、使い込み、ワークシェアリング、契約と違う など |
個人トラブル | 社内不倫、やる気のない社員、上司との口論 など |
心身問題 | セクハラ、パワハラ、うつ病 など |
全国社会保険労務士会連合会「中小企業における職場トラブルの防止」より